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あの違和感は正しかった〜介護現場の急変を防ぐ記録と仕組み〜

目次

はじめに:その違和感を、見過ごさない

介護施設に入職して1年が経ちました。

日々の業務には少しずつ慣れ、利用者様の顔と名前、癖や好き嫌いなどの特徴も自然に結びつくようになってきました。

それでも、私の中にはずっと消えない「もやもや」がありました。

電子カルテは更新されず、古い情報のまま止まっている。

一方で紙の記録は別に存在し、必要な情報はあちこちに散らばっている。

処置は「これまで通り」で続けられ、明確な根拠や見直しの機会は少ない。

多職種連携も、形式としては存在しているものの、実際には十分に機能しているとは言い難い場面がありました。

もちろん、誰か一人が悪いわけではありません。

職員は皆、私も含めそれぞれの持場で必死に働いています。

限られた人員と時間の中で、目の前の業務をこなすことに全力を尽くしている。

それでも私は、心のどこかで問い続けていました。

「このままで、本当にこの人たちを守れるのだろうか?」

この違和感の正体が何なのか、その時の私はまだ言葉にできていませんでした。

あの日の違和感は、正しかった

ある日、A様という90代の利用者様のケアに入ったときのことです。

二日前に発熱し、前日から解熱。朝は、食事などの様子やバイタルサインに大きな変化はなく、数値上は「いつも通り」。発熱以外の記録や申し送りは特に残されていませんでした。

しかし、午後お部屋を訪問すると、表情、反応、わずかな動き……

それらを総合すると、明らかに「何かがおかしい」と感じました。

経験的な感覚、と言ってしまえばそれまでかもしれません。

ですが、看護師として現場に立つ中で培われる【非言語的な違和感】は、決して軽視すべきものではないと私は考えています。

私はその違和感を先輩達に伝えましたが、返答は

「いつも通りよ」

忙しい現場では、よくあるやり取りかもしれません。

「問題なし」と判断されれば、そのまま日常は流れていきます。

しかし結果として、その利用者様はまもなく急変し、救急搬送となりました。

あのとき感じた違和感は、間違いではなかった。

むしろ、最初の重要なサインだったのです。

現場が止まる瞬間

搬送対応の場面で、私は大変戸惑いました。

  • 情報がない
  • 経過が追えない
  • 何が起きていたのか説明できない

救急隊が到着しても、必要な情報を即座に提示できない。

直近の状態変化、既往歴、処置の経過……

どれも断片的で、統一された形で整理されていませんでした。

その場で私たちがやったことは、各自の記憶や紙の記録を頼りに、情報をかき集めることだけです。

しかし、それでは遅い。

本来であれば、搬送時には「1枚で状況が伝わる情報」が必要です。

私はその時、強く実感しました。

現場の流れは【忙しさ】ではなく、【構造】によって止まるのだと。

なぜ起きたのか

この出来事を振り返ったとき、原因は驚くほどシンプルでした。

【仕組みがない】

  • 情報が更新されない
  • 記録様式が統一されていない
  • 判断が個人の経験に依存している

一つひとつは、小さな問題に見えるかもしれません。

しかしこれらが積み重なると、現場は次のような状態になります。

【気づいても守れない現場】

誰かが違和感に気づいても、それが共有されず、記録に残らず、次の判断に活かされない。

結果として、

気付き】は単なる個人の感覚で終わり、【対応】にはつながらないのです。

これは個人の能力の問題ではありません。

構造の問題です。

もう一つの気づき

救急搬送先の病院で、ご家族からA様のお話を伺いました。

A様は、長年仕事一筋で生きてこられた方で

子育て後にサラリーマンを卒業し、起業。責任感が強く、人付き合いを大切にし、信用を積み重ねることに奔走。

長年、心臓疾患や頻尿に悩みながらも、日常を守り続けてきた人生でした。

施設では「不穏」「訴えや徘徊の多い人」と表現されていた行動。

しかしその背景には、明らかな理由がありました。

  • 不安
  • 身体的な不快感
  • これまでの生き方

それらが重なり合って現れていた行動だったのです。

このとき私は、強く感じました。

行動には、必ず意味がある】

そしてその意味を理解するためにも、日々の変化を丁寧に捉え、記録し、共有することが不可欠だということを。

私が変えたいこと

この経験を通して、私は決めました。

  • 違和感を、言葉にする
  • 情報を、残す
  • 日常を、整える

特別なことではありません。むしろ、看護の本質とも言えることです。

しかし忙しい現場では、この「基本」が削られたり、後回しにされがちです。

だからこそ、意識的に取り組む必要があります。

違和感をそのままにせず、「どこが、どう違うのか」を具体的に表現する。

記録は「書くこと」が目的ではなく、「次の人が判断できる情報」を残すことが目的です。

そして、それらが自然に循環するような仕組みを整える。

これが、現場を守る力になると私は考えています。

明日からできる3つのこと

同じことを繰り返さないために、
現場で実践できることは決して難しくありません。

  1. 「なんとなくおかしい」を言葉にする
    「元気がない」ではなく、「表情が乏しい」「反応が鈍い」など、具体的に。
  2. 変化は“必ず記録する”
    小さな変化こそ重要です。記録されて初めて、経過として意味を持ちます。
  3. 情報は“誰が見てもわかる形”にする
    専門職だけでなく、多職種や次の勤務者も理解できる表現で。統一されたフォーマットがあると、さらに効果的です。

これらを積み重ねることで、現場は確実に変わっていきます。

おわりに

現場はすぐには変わりません。

しかし、

カルテの一行
何気ない声かけの一言
ほんの少しの環境調整

その積み重ねが、やがて大きな差になります。

違和感は、現場を守るサインです

それを見過ごすか、拾い上げるかで、守れる命が変わるかもしれない。

今日も私は、そのサインを見逃さず、現場に立ち続けます。

※この記事は過去の経験をもとに再構成しています。以前の記事はコチラから読めます。

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この記事を書いた人

15年の看護経験と主婦の視点から、誰もが「ご機嫌さん」でいられる暮らしの仕組みづくりを発信しています。いくつになっても学ぶことはいっぱい。誇りを持って働き、健康に暮らせる未来を目指して、理想をカタチにすべく日々学びながら活動中です。

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