「高齢者の転倒=外出時だけの問題」と考えていませんか?
実は、高齢者の転倒事故の多くは自宅の中で起きています。

毎年10月10日は『転倒予防の日』。
「10と10で転倒ゼロ」の語呂合わせから制定され、社会全体で転倒を防ぐ意識を高める取り組みが進められています。
本記事では、なぜ環境整備が高齢者の安全を守る”第一歩”なのかを、厚生労働省や消費者庁などの公的データをもとにわかりやすく解説します。
転倒は介護が必要になる大きな要因
高齢者が介護を必要とする原因の第4位は「骨折・転倒」(13%)です。これは厚生労働省「国民生活基礎調査(令和元年)」のデータです。
ちなみに、
- 1位:認知症(17.6%)
- 2位:脳血管疾患(16.1%)
- 3位:高齢による衰弱(13.9%)
転倒はこれらに次ぐ位置にあり、決して軽視できない要因です。
転倒で骨折し、入院やリハビリを経ても、歩行機能や生活力が大きく低下することは珍しくありません。つまり転倒は、「介護生活の入口」になりやすい事故なのです。
👉️関連記事:『高齢者の転倒予防に杖は必要?折りたたみ式杖とノルディックステッキを比較してみた』
転倒・転落は命にかかわる重大事故
転倒事故は「ケガで済む」イメージを持てれがちです。
しかし実際には、命にかかわるケースも少なくありません。
厚生労働省「令和4年人口動態統計」によると、高齢者の転倒・転落・墜落による死亡者数は10809人。これは交通事故による死亡者数の5倍以上に当たります。
「ちょっと転んだだけ」の出来事が、寝たきりや死亡につながる。これが転倒事故の怖さです。
実は”家の中”が一番危険
「転ぶのは外出中、段差や道路で」と思われがちですが、実際は違います。
国民生活センターの調査によると、高齢者の住宅内事故516件中、
- 転落:30.4%
- 転倒:22.1%
合計すると52.5%が、階段や居間など日常的に使う場所で起きた転落・転倒によるものでした。
さらに最新の調査では、高齢者の転倒事故の約80%が自宅内で発生しています。
特に浴室は、滑りやすい床や急激な温度変化による身体の硬直などが原因で事故が集中しやすい場所です。
つまり「自宅=安全」ではなく、実は自宅こそが高齢者にとって最も危険な場所なのです。

👉️関連記事:『「脱水症」と「熱中症」って一緒じゃないの?両者の特性と対策を調べてみた』
家の中で転倒が起こりやすい理由
高齢者が自宅で転倒しやすい背景には、身体の変化と住環境の課題が重なっています。
身体の変化
- 筋力・バランスの低下:加齢により足腰の筋肉が衰え、ちょっとした段差でもつまずきやすくなる
- 視力・聴力の低下:暗がりや物音に気づきにくくなる
住環境の課題
- 床に荷物が置かれている
- 通路を電気コードが塞いでいる
- カーペットやマットの端がめくれている
- 階段や浴室に手すりがない
- 照明が暗い
これらが複合的に影響し、事故につながるのです。
環境整備が第一歩になる理由
転倒予防というと「杖や手すり」といった道具を思い浮かべがちです。
しかし、その前に大切なのが住環境の整備です。
例えばこんな工夫だけでも、転倒リスクをぐっと減らせます。
- 床に荷物を置かず、道路を広く確保する
- 電気コードは壁際にまとめる
- よく使うものは腰の高さに収納する
- カーペットの端を固定する
- 廊下や階段に十分な照明を設置する
これらは特別な費用をかけずにはじめられる、すぐ実践できる対策です。高齢者本人も家族も、今から取り組める”転倒予防の第一歩”となります。
👉️関連記事:『足トラブル健康は足のケアから|高齢者が簡単に今日から取り組める3つの方法』
10月10日は「転倒予防の日」
毎年10月10日は「転倒予防の日」。
「10と10で転倒ゼロ」という語呂合わせから日本転倒予防学会が制定し、啓蒙活動を行っています。
この日をきっかけに、家庭内の環境を点検してみましょう。
- 転倒しやすい場所はないか
- 不要な荷物が通路に置かれていないか
家族みんなで確認することが、安心につながります。
まとめ
高齢者の転倒は、決して珍しい事故ではありません。
- 介護の原因第4位が「骨折・転倒」
- 死亡数は交通事故の5倍以上
- 自宅内での事故が8割以上
これらの事実からも、環境整備の重要性がよく理解できます。
まずは「床に物を置かない」「照明を明るくする」など、身近な工夫から始めてみましょう。
家の中を安全に整えることは、高齢者本人の安心だけでなく、家族にとっても大きな安心につながります。

転倒予防は、特別なことではありません。
「生活の工夫」こそが最大の予防策です。
今日からできる小さな改善を積み重ねて、大切な毎日を守っていきましょう。
👇️こちらの記事をご参照ください
コメント