今日も施設の食堂で、Aさんはらくがき帳を取り出します。
色鉛筆を手に取り、その日の食事で一番印象に残ったおかずやコップなど、ポイントを絞ってスケッチする。
メニューは箇条書きで書き添えて、一言メモを加える。
食後のひとときに、毎日4回。シンプルだけど、丁寧に。何度も修正を繰り返し、仕上げていかれます。
1年前より向き合う時間が長くなりました。
何度も見直し、消しゴムで消し、推敲されながら取り組まれるからです。
そして、当のAさんは真剣です。そしてとても楽しそう。
「私、絵は下手なままなんですけどね。書くのが好きだから続けてるんです。ボケ防止にもなると思って。」
Aさんは笑いながらそう言います。
絵との出会い
90歳のAさんが絵を始めたのは、子育てが落ち着いた頃でした。
子どもの頃からずっと好きだった絵を、「今度こそ趣味にしよう」と絵画教室に通い始めたそうです。
水彩、パステル、油絵…時間をかけていろんな手法を学び、最終的にたどり着いたのは「色鉛筆」。
「上手になろうとは思わなかった。ただ、描くのが楽しかっただけなの。」
その「楽しい」という気持ちが、施設に入ってからも続いています。
作品のテーマは、「毎日作る」料理から「毎日食べる」料理へ。
自宅から持ち込んだ色鉛筆とらくがき帳は、Aさんにとって大切な相棒です。
2年前の自分との再会
ある日、Aさんの古いらくがき帳が出てきました。
2年前の4月に描いたページを一緒に読み返していると、料理の感想のあとに、こんな言葉が書かれていました。
「毎日同じような絵を書き留めているけど、私はそんな毎日を描くことが続けられてうれしい」
その言葉を読んだAさんは、「この時といまも同じ気持ちだわ」と微笑まれました。
2年前のAさんが書いた言葉が、今のご自分を笑顔に。
その瞬間を隣で見ていた私は、なんだか胸が熱くなりました。
看護師のわたしが感じたこと
Aさんの習慣には、認知機能を保つ要素が詰まっています。
描く:手先を動かし、脳の広い領域を刺激する
書く:言語化することで思考を整理し、記憶を定着させる
振り返る:過去の記録を読み返すことで、自己肯定感が生まれる
そして何より、「好きだから続けている」という点が最大の秘訣です。
義務ではなく楽しみだから、90歳になっても無理なく続けられる。
続けられるから効果が出る。
その好循環がAさんの認知機能を守っているのだと、私は現場で実感しています。
私もこんなふうに年を重ねたい
Aさんの姿を見て、私は思いました。

私もこんなふうな高齢者になりたい
特別な才能も、高価な道具も必要ない。好きなことを、毎日少しだけ続ける。
それだけで2年後の自分が笑顔になれるなら、こんなに素敵なことはありません。
あなたには「毎日続けたいこと」がありますか?
下手でいい。短くていい。まず1つ、今日から始めてみてください。
まとめ
Aさんから学んだことを表にしました。
習慣を身につけることのメリットを改めて実感。生活に取り入れていきたいですね。
| Aさんの習慣 | 効果 |
|---|---|
| 毎日食事の絵を描く | 手先の運動・脳の活性化 |
| メニューと一言メモを書く | 言語化・記憶の定着 |
| 好きだから続けている | 無理なく長期間継続できる |









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