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【現場を支える人たち①】20年選手の介護士ハヤブサさん|「怖い人」と思っていたら、一番信頼できる人だった

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⚠️本記事に登場する人物は実在しますが、プライバシー保護のため仮名を使用し、一部情報を変更しています。

「この施設、ヤバイかも?」

正直、最初にそう思いました。

「何してるの!ダメでしょ!」
「何度言ったらわかるの!いい加減にして!」

介護スタッフのハヤブサさん(仮名)の声が、廊下まで響いてきたのです。

利用者さんに向かって、叱りつけるような口調で話している。それはまるで自分の親や子に言い聞かせるような言いっぷり。

若い職員はもちろん、利用者さんもハヤブサさんには威圧感を感じています。

でも、ベテラン職員は違いました。ハヤブサさんを、静かにリスペクトしていたのです。

「職業柄、これはアウトやろ」

そう感じながら、私はしばらく距離を置いて見ていました。

目次

怒鳴るのには、理由があった

ハヤブサさんが特に声を荒げるのは、こんな場面でした。

他の利用者さんの部屋から、服やおむつ、ティッシュを持ち出してしまう方に対して。
誤って他の人の食事や飲み物に手を伸ばしてしまう方に対して。

これらは認知症の症状によるものです。本人に悪意はない。

でも放置すれば、感染リスク、誤嚥リスク、利用者同士のトラブルにつながる。

ハヤブサさんはそれをよくわかっていました。だから、本気で止める。

そして叱るだけで終わらない。持ち出しが起きないよう、物の配置を変える。環境ごと整えることで、同じことが起きにくくする。

ハヤブサさんがいる場所では緊張が張り詰めますが、小さな事故が起きません。

怒鳴り声の裏に、問題解決まで考える頭がありました。

入浴介助で見えたもの

決定的な場面がありました。

入浴介助の場面です。

私も含め、ほとんどのスタッフがたくさん着込んでいる上着から脱がせます。それが自然な流れだと思っていたからです。

でもハヤブサさんは違いました。

まず、ズボンから脱がせる。

「なぜだろう?」と思っていると、ハヤブサさんが教えてくれました。

「靴を履いて立位がしっかりできている間に、ズボンを先に脱いでもらう方が安全なんです。」
「寒がる人が多いから、皆必要以上に厚着。脱ぐの嫌がるでしょ?上着は後のほうが良いの。」

靴を履いているうちは立位が安定している。その間にズボンを済ませる。座って靴を脱いでから、上着へ。

転倒リスクを最小化し、利用者さんの気持ちにも配慮した、20年が生んだ順番でした。

私は、自分の「当たり前」を見直しました。

20年の「目」が見えるもの

ハヤブサさんはよく、他のスタッフへ声をかけていました。

「この方、昨日からここの皮膚の色が違う」
「さっきの食事の食べ方、いつもと違った」
「今日は表情が硬い気がする」

誰もが見ているはずの場面で、誰も気づかなかった変化を、ハヤブサさんは拾い上げる。

観察が、20年かけて研ぎ澄まされていました。

看護師目線のポイント 「怒鳴る人」の正体

介護の現場では、声の大きさや言葉の強さが「問題」として見られることがあります。

ハヤブサさんに対する家族からのクレームも、一度や二度ではなかったと聞いています。

でもハヤブサさんを見ていて思いました。

「真面目だから、怒鳴る。」

利用者さんの安全に、本気で向き合っているから声が大きくなる。表面だけ見れば「怖い人」でも、その根っこにあるのは誰よりも深い責任感でした。

逆転の気づき 「ダメでしょ!」から「どう思う?」へ

私自身も、ハヤブサさんに怒られたことがあります。

「そうじゃないでしょ!」

声が大きく言い方はストレートで、正直ドキッとしました。

でもいつの頃からか、変わってきました。

「ちょっと、どう思う?」

困った場面で、ハヤブサさんが私に相談してくれるようになったのです。

ケアの判断、利用者さんの変化、対応の迷い。

怒られる関係から、相談される関係へ。

それはハヤブサさんが、私を「話せる相手」として認めてくれたということだと、今は思っています。

定年後の穏やかさ

今年、ハヤブサさんは定年を迎え、再雇用という形で現場に戻ってきました。

変わったことがあります。

穏やかになった。

あれだけ背負っていた責任感の荷が、少し降りたのかもしれません。細やかな気遣いはそのままに、以前より柔らかい表情で仕事をされています。

「ああ、この人はずっと、重いものを抱えて働いていたんだな」

そう気づいた時、私の中でハヤブサさんへのリスペクトが、静かに深まりました。

まとめ

ハヤブサさんから学んだのは、こういうことです。

  • 第一印象は、その人のすべてではない
  • 「怒鳴る」ことと「丁寧なケア」は、矛盾しない
  • 20年の経験は、小さな動作と鋭い観察眼の中に宿っている
  • 叱った後、環境まで変える。それが本物の問題解決

現場を支える人たちの話は、外からはなかなか見えません。

でも、少し立ち止まって観察すると、そこには深い知恵と責任感が積み重なっています。

ハヤブサさんは今日も、静かに現場に立っています。

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この記事を書いた人

15年の看護経験と主婦の視点から、誰もが「ご機嫌さん」でいられる暮らしの仕組みづくりを発信しています。いくつになっても学ぶことはいっぱい。誇りを持って働き、健康に暮らせる未来を目指して、理想をカタチにすべく日々学びながら活動中です。

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