連日の高温注意報。テレビや新聞で「自宅で亡くなっていた高齢者」「エアコン未使用で熱中症」というニュースを目にしない日はありません。
しかし、その多くは決して「特殊なケース」ではありません。
高齢者は、年齢とともに【暑さを感じにくく】【喉の乾きを感じにくく】【体温調整も衰えていく】ものです。また、運動機能も衰え、【エアコンの操作】や【水を飲みに行く】といった行動が困難になりがちです。
私は訪問看護の現場で、こうした危機に直面してきました。
「まだ大丈夫」「うちは扇風機で十分」「冷房は贅沢」
こうした言葉を、何人ものご高齢者から聞いてきました。けれど、その”昔は当たり前”が、今の異常な夏には通用しないのです。

いま、この猛暑を生き抜くために必要なのは、たった5つの【命を守る習慣】です。
どの世代の方も同じですが、特に、独居・老老介護家庭の高齢者の方々には、ぜひ意識していただきたい内容です。
【命を守る5つの習慣】
1|水分は「時間で飲む」
高齢者は喉の乾きを感じにくく、普段から体内の水分量も少なくなっています。「トイレが近くなる」、「汗をかくのが困る」という声をよく聞きますが、【のどが渇いてから飲む】では遅いのです。
命を守るうえで、1日に補給する最低水分量は1500mlです。食事の中から水分も取れると想定しても、800〜1000mlは飲み物から補いたいところです。
ペットボトルで言えば2〜3本。これを「多すぎる」と感じる方、いらっしゃるのではないでしょうか。正直なところ、一度に飲むのは無理ですし、体にも負担がかかります。
それを回避するために、一日を下記のように「区切って飲む」ことを習慣にしましょう。
- 朝起きたら1杯
- 10時ごろに1杯
- 昼食時に1杯
- 15時ごろに1杯
- 夕食時に1杯
- 就寝時にもう1杯
コップや湯呑みが1杯約150〜200mlが目安です。冷たすぎないお茶や水、経口補水液などが理想です。

アルコールは飲み物から除外しています。なぜなら、アルコールの利尿作用が体に負担をかけるからです。
食事以外に「最低でも1日1リットルは摂取」を目標に、少しずつをコツコツ飲むようにしましょう(持病で水分制限が必要な方は、かかりつけの医師によく相談してください)。
2|エアコンは「28度設定を固定」で使う
「エアコンは電気代がもったいない」「体に悪い」という考えは、今や命を脅かす誤解です。
扇風機や窓の開放だけでは、猛暑はしのげません。
- 室温28度を超えたら冷房スイッチON
- エアコンの自動運転を28度前後で設定
- 夜間も消さず、温度設定で調整
室温計を見える場所に置き、「数字で確認」する習慣を。「暑さに気付かない」が一番危険です。
3|食事は「3食とる」「1品は水分を含むものを」
暑さで食欲が落ちる夏は、知らないうちに栄養・水分が不足しがちです。しかし、食べないと体力が落ち、汗をかきにくくなり、便秘にもなります。これが熱中症を招く悪循環なのです。
- 3食規則正しく
- お味噌汁、スープ、果物など。塩分やミネラル、水分を含むものを1品追加
- 麺類だけ、冷たいものだけに偏らない

とろろ汁麦ごはんやきのこと海藻の味噌汁、ミネストローネスープなどは、これだけでも一品になります。スイカやバナナ、キウイなどの果物は、ミネラル、繊維質がとれる最高の果物ですが、毎食摂取するとカリウム過多になるので1日一品が適量です。
冷蔵庫など目につくところに「3食チェック表」を貼って、欠食の有無を確認されるのがいいでしょう。
4|「人とつながる」ーー1日1回、誰かと話す
孤独や孤立は、命のリスクです。独居の方は必ず1日1回、誰かと連絡を取る習慣を。
- 連絡相手は、家族・ご近所さん・訪問看護・民生委員・地域包括センターなど
- 直接会わなくとも電話やLINEでOK
- 「今日は元気」「明日もよろしく」手短にあいさつだけ伝えてもOK
会えなくても、声を聞くだけで安心感と異常の発見にもつながります。もし自分から発信できない場合、連絡の受け手になる方に定期連絡をお願いすることも大事です。お互い様の関係づくり、ぜひ習慣にしましょう。
5|「生活リズム」を崩さない
夜ふかし・朝寝坊・昼夜逆転。こうした不規則な生活は、身体の感覚を狂わせ、熱中症リスクを高めます。特にひきこもり状態の方は要注意。
- 朝起床したらカーテンを開ける
- 3食きちんと取る
- 早朝もしくは夕方に軽く体を動かす(散歩・室内歩行・ストレッチなど)
- 22〜23時までに就床
「生活リズム」を整えることは、体温調節能力を保つうえで非常に重要です。
家族・地域・医療職も「声掛け」を
高齢者は、「自分は大丈夫」「迷惑をかけたくない」「こんなのは平気」と思いがちです。しかし、今年の暑さは”自己判断”を許しません。家族も地域も、次のような一言をかけてください。
- エアコン使ってる?
- 今日は水分何をどれだけ飲んだ?
- なにか困っていることはない?
こうした「声掛け」が、熱中症・孤独死を防ぎます。

まとめーー「昔といまは、違う。」
私たちが子どもの頃の夏と、いまの夏は、気温も湿度も「異次元」です。もう、「昔はこれで平気だった」は通用しません。
命を守る5つの習慣。いまこそ始めましょう。
そして、見守り合い、声を掛け合いましょう。「暑すぎるけど、どうですか?」「ホンマたまりませんわ」こういった声かけが、この夏を乗り切る最大の武器です。
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