私は高齢者施設に就職して1年目の介護士です。
ある日のこと、入浴介助で靴下を脱がせる時に、ふと気づきました。〇〇さんの小指の先がなんだか赤い!
先日の夜勤で身支度を手伝った時は気づかなかったのに。今朝の申し送りでもとくに報告はなかったな。
この方は1か月前に入所された方。軽い糖尿病があり、手足の血流が良くないと聞いていた。
「これってただのしもやけ?お風呂から上がったら戻る?」
なんだかおかしいと思って先輩に聞いてみると、「看護師さん呼んできて」。
看護師に来てもらい、入浴後に見てもらった。小指はまだ赤い。傷はなさそう。
看護師は「先生に報告して診てもらいますね」と手当のあと、施設担当医に連絡してくれました。
ーーこれは、どこにでもある高齢者施設のお風呂場での1シーンです。
この介護士さんの行動は、全部正解でした。
足の観察8つのポイント
たかが足、されど足。
体から一番遠い場所にあるだけに、本人も介護職も見落としがちなのが足です。
それだけに、しっかり観察するとさまざまな変調に気づいて驚くことが多い。
足で一番気をつけなければならないのが、血行障害と末梢神経障害です。
これらが起きると足にさまざまなトラブルが生じます。
- 床に足をつけられなくなる。
- 立てなくなる。
- 歩けなくなる。
そして一番怖いのが——足そのものが腐ることです。
そうならないために、足を見るときは8つのポイントを押さえて観察してください。
足の観察8つのポイント
- 皮膚・爪の色:蒼白・紫・黒・黄色に変化していないか
- 腫れの有無:むくみ・熱感を伴う腫れはないか
- 傷の有無:靴ずれ・潰瘍・亀裂はないか
- 温度:冷たくないか(左右で比べると分かりやすい)
- 感覚の有無:触れても反応があるか
- 痛みの有無:「痛くない」が一番危険なサイン
- ニオイ:白癬・感染・壊疽のサイン
- 足の形:外反母趾・ハンマートゥ・変形はないか
特に注意が必要なのが、糖尿病をお持ちの方の足です。
生活習慣病のひとつである糖尿病。罹患している高齢者は多いです。なぜ注意が必要なのか、例を挙げて説明します。
糖尿病足病変とは
糖尿病の厄介なところは、血液の中に糖質がだだ漏れになること。
栄養豊富で高カロリーな糖が血管にたまり続けると、血液がドロドロになり、血管を傷つけていきます。
当然、血液の流れも悪くなる。毛細血管などの細い血管に、新鮮な血液が届きにくくなります。
そうなると、組織の先の先——指先・足先・腎臓・目の網膜など、細い血管が集まる場所から順番に機能しなくなっていきます。やがて、組織が腐っていく。
「ヘドロで詰まった排水管」を想像してみてください。それが、体の中で起きているのです。
血流が悪くなり、新鮮な血液が届かなくなった組織はやがて腐っていく——そう書きました。でも腐る前に、もうひとつ怖いことが起きます。
それが、感覚の鈍化です。
氷の入ったバケツに手を入れると、最初は「痛い!冷たい!」と感じます。でもしばらくすると、その感覚がわからなくなり、不思議なことに逆に温かみすら感じてきます。
バケツから手を出してはじめて、しびれと痛みが戻ってくる。
糖尿病で血流が慢性的に悪くなった組織では、これと同じことが日常的に起きているのです。
靴の中で出血していても気づかない。傷ができても痛くない。だから発見が遅れる。だから壊疽(腐る)になる。そうなると、足を切断することになりかねません。
介護職が気づけるサイン
そんな恐ろしいこと、私たちに見つけることができるのかな?と思われるでしょうが、大丈夫です。
毎日の生活で行う更衣や入浴などありふれたケアの中に、次のことを意識すれば良いのです。
「足の観察8つのポイント」です。覚えていますか?
たとえば、朝の更衣介助。パジャマから服に着替えるとき、ほんの少しだけ意識してみてください。
「前回見た時と比べて、今朝の足はどうか?」
- 指先や爪の色、同じかな?
- 腫れていないかな?
- 傷はないかな?
- 冷たすぎる?温かすぎる?
- 触ったとき、くすぐったい?しびれてる?
- 痛がっていないか?反対に痛そうなのに「痛くない」と言っていないか?
- 足の形に変化はないか?
特別な道具も、医療の知識も要りません。日々の観察と記録を通して、「いつもと違う」に気づくことが重要です。気づいたら同僚や上司にダブルチェックしてもらうこと、看護師や医師に報告することにつながります。
あなたのその気づきが、足の切断を防ぐはじめの一歩になるかもしれません。
気づいたらどう動く
「いつもと違う」と気づいたら、次の順番で動いてください。
① まずはダブルチェック
自分だけの判断にしない。同僚や先輩に「ちょっと見てもらえますか?」と声をかける。「気のせいかな」で終わらせないことが大切。
② 看護師・医師に報告
施設に看護師が常駐していれば直接報告。いなければ上司を通じて、訪問・往診のタイミングで伝えてもらう。報告した内容は必ず記録に残すこと。「言った言わない」を防ぐためにも。
🔗報告の仕方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

③ 緊急度を意識する
8つの観察ポイントを調べて、明らかに「おかしい」時は、直ちに報告を。
ですが、「皮膚全体が乾燥して粉を吹いている」、「もともとカチコチの踵にひび割れがある」といった場合は、きれいにする、保湿する、保護するといった手当を行ってからで大丈夫です。
ただし、記録は残しておきましょう。
| 状態 | 対応 |
| チアノーゼ/壊疽(腐る)の疑い/傷がある/潰瘍 | 今すぐ報告 |
| 皮膚の乾燥/亀裂(色の変化なし) | 手当をする(足浴・保湿・靴下でガード)→次回看護師訪問時に報告 |
まとめ
一番大切なことは、「利用者さんのいつもの足を知っている」ことです。
入所された当初や、週1回の体重測定や入浴介助のついでに、普段の足を8つの観察ポイントで見て記録しておく。それが「いつもと違う」を判断する基準になります。
たとえば、「なんかカサカサしてるな」「ひび割れが増えたな」——それも「いつもと違う」サインです。
この流れが、介護職の皆さんが最前線で果たす役割です。
医師でも看護師でもなく、毎日その方の足に触れるあなただけが気づけることがある。
たとえ様々な理由で立ち歩くことが出来なくなっても、足は姿勢を保つための大切な土台として働き続けてくれます。
フットケアとは、その大事な足を失わないよう守ることです。
特別な技術がなくてもできる。「いつもと違う」に気づく目と、報告する勇気があれば。
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