私は50代になってから、「食べること」が以前ほど自然にいかなくなったと感じています。
健康や栄養のことを意識するようになったのも、この頃からです。
昔は焼肉やカツ丼、パフェなどのハイカロリー食を、どんな時間でもペロリと平らげていましたが、最近は夜に油ものを食べると翌朝に胃もたれが残り、モウレツに後悔します。あっさりして淡白なものが美味しく感じる様に変わりました。
検診では特に問題なし。ということは、「自然な成り行き」=「身体が少しずつ老化している」という証拠でしょう。
仕事では高齢者施設の入居者さんたちを見て、「食べる力=生きる力」だと痛感する毎日です。
食べることを諦めない方ほど、表情が明るく、会話も弾みます。
この姿に、私自身の「これからの食生活」を重ねて考えるようになりました。
50代から始まる、年齢とともに変わる“食のリズム”
私の両親が言っていました。

「最近は一日3食は多く感じるな。ご飯もお茶碗に半分で十分だよ。」
一緒に御飯を食べても、確かに食事量が私のものと比べると6〜8割ほど。
両親が私と同じ年齢の頃は、マラソンやハイキングを楽しみ、ステーキや寿司などタンパク質系の食事を「がっつり」食べていました。そう考えると、少しショックでもあります。
加齢とともに、筋肉量の減少・代謝の低下・味覚や嗅覚の鈍化が進みます。
「お腹が空かない」「味がしない」と感じるのは、身体の自然なサイン。
けれど放っておくと、栄養不足やフレイル(虚弱)に進むリスクがあります。

看護の現場でも、「体重が1か月で2kg減った」「食事時間が極端に短くなった」という方は要注意。
単なる食欲不振ではなく、筋肉量の減少(サルコペニア)や体力低下の前兆である場合が多いのです。
こうした変化は、誰にでも起こりうる”プレ高齢者の入口”のサイン。
「自分はまだ大丈夫」と思わず、身体の声に耳を傾けたいですね。
“タンパク質”でフレイル予防〜毎日ちょい足しの食習慣〜
年齢を重ねたら、まず意識したいのがタンパク質。
タンパク質は筋肉・血液・免疫細胞をつくる材料で、まさに”元気の源”です。

代表的な食品は、肉類、魚介類、大豆製品、卵、乳製品、そしてゼラチンです。
とはいえ、
「肉は重い」
「魚は骨が面倒」
「豆腐は飽きる」
という声も多いものですよね。
そんなときは、“ちょい足し”でOK。
- 朝食にゆで卵を1つ
- 昼食にツナ缶や納豆をプラス
- 間食にゼラチン入りのゼリーやマシュマロを
- 夕食に豆腐入りスープや味噌汁を
私も忙しい朝はバナナとヨーグルトだけ、という日が続いた時期がありました。
そこにゆで卵1つ、または卵とネギ入りの納豆を足すだけで、午後の集中力が明らかに違いました。
身体は本当に正直です。
「毎日続けよう」ではなく、「今日は何を足そうかな?」くらいで大丈夫。
その小さな積み重ねが、1年後のあなたの身体を変えます。
水分補給は“喉が渇く前”がポイント
「喉が乾いた」と感じた時点で、すでに軽い脱水が始まっています。
しかも高齢者の脱水症状は、夏場だけでなく冬の乾燥時期にも多いのです。
理由はシンプル。「飲まなくなる」から。
以前、冬の訪問先で、軽い脱水による立ちくらみを起こした方がいました。原因を問うと、
「喉が渇かない」
「トイレが近くなると困る」
とのこと。
食事以外の水分摂取はほとんどなく、食事時も数口舌を湿らす程度だけ。
幸い、ケガや意識障害はなく、点滴で回復されました。
これをきっかけに、食卓に常温の水を置き、時間を決めて少しづつ飲む習慣をつけてもらいました。
水分は、1日1.2〜1.5リットルを目安に、こまめに少しずつ。
みそ汁・スープ・ゼリー・経口補水液なども“水分源”としてカウントしてOKです。
👉️関連記事:高齢者の脱水症状や経口補水液の選び方は、こちらの記事をご覧ください。
食べる喜びを取り戻す“共食”の力
「一人で食べるより、誰かと食べた方がおいしい」
これは気のせいではありません。
共食(きょうしょく)は、脳の活性化・食欲促進・孤立予防に効果があるといわれています。
訪問先でも、近所の仲良し3人組が集まってお茶をしている光景をよく見かけます。
笑い声が絶えないその時間こそ、フレイル予防の“最高のサプリメント”。
一緒に食べる相手は、家族でも友人でも構いません。会話を交わしながら食べることが何よりの栄養です。
もし一人暮らしであっても、行きつけのお店で店員さんと軽くお喋りをしたり、ペットと一緒に食事を楽しんだりすることも立派な”共食”。
「安心できる空間で食べる」ことが、孤立を防ぎ、心と身体を元気にしてくれます。
フレイルを予防するためにも、食卓を囲む時間を大切にしたいですね。

まとめ
食事は、栄養をとるだけの行為ではなく、「自分をいたわる時間」。
そして、食べる力はそのまま「生きる力」につながります。
無理な食事制限よりも、「今の自分に合った食べ方」を見つけることが、健康寿命を延ばす第一歩。
「今日の一食を大切にする」ことが、フレイルを遠ざけ、未来の健康をつくるのです。
🍀次回予告:「運動編」🍀
プレ高齢者の今だからこそできる、日常生活に溶け込む運動の工夫を紹介します。
次もぜひ読んでくださいね。
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